メタバースの可能性

ビデオ通話との比較

アバターコミュニケーションでは、匿名化や顔出し不要により対面コミュニケーションに伴う煩わしさやプレッシャーといった心理的負担の軽減に役立つ可能性1)が示唆されています。

 

また、ビデオ通話と比較した際のメリットとしては、そこに実際に存在する感覚(presence)や、他者との一体感を感じられやすいという点 2)や、自己開示性が促進され発話量が増えるという報告もあります。3)

1) 久木田 水生 : アバターとコミュニケーションの未来. 人工知能, 36巻, 5号: p. 585-592. 2021

2) Andrew Yoshimura, Christoph W. Borst. A Study of Class Meetings in VR: Student Experiences of Attending Lectures and of Giving a Project Presentation
Frontiers in Virtual Reality, Volume2, Article 648619, May 2021

3) 市野順子、井出将弘、横山ひとみ、淺野裕俊、宮地英生、他 : 身体的アバタを介した自己開示と互恵性ー「思わず話してた」-情報処理学会 インタラクション2022論文集, p21-30, 2022

 

メンタル医療における可能性

アバターコミュニケーションは、身体情報や非言語情報が制限されるため、対面やビデオ通話よりも感情や意図、情報が正確に伝わりづらいという課題があります。

 

一方で、身体情報や非言語情報の制限が逆にメリットとして機能する場合があり、例えば、社会不安や対人過敏性を示す人たちのコミュニケーションにおいて、より快適さをもたらす可能性4)があると考えられます。

4) Freeman, D., Reeve, S., Robinson, A., Ehlers, A., Clark, D., Spanlang, B. and Slater, M. Virtual reality in the assessment, understanding, and treatment of mental health disorders. Psychological Medicine, 47, 2393–2400, 2017

社会的アプローチ

ソーシャルコミュニティでのつながりや支援の多さが健康寿命と関連する5)ことが知られており、自身と同様の体験を持つ他者とのつながりは、当事者やその家族の心理的負担の軽減に役立つ可能性があります。

 

海外でもVRグループセラピーとして、ACを使用した思春期および若年成人の癌患者6)、物質使用障害7)、悲嘆8)などに対する仮想空間におけるピアサポートグループの実践が報告されています。



5) Holt-Lunstad J,Smith TB, Layton JB.Social relationships and mortality risk:A meta-analytic review. Plos Medicine  ;7(7):e1000316, 2010
6)
https://foretellreality.com/vr-therapy-and-support
7) Anjali Mahapatra.A Pilot Study: A Virtual Reality-Based Peer Support Community for Individuals with Substance Abuse Disorders http://hdl.handle.net/1803/16469 2021-03
8) Knowles LM, Stelzer E-M, Jovel KS, et al: A pilot study of virtual support for grief: Feasibility, acceptability, and preliminary outcomes. Computers in Human Behavior 73:650-658, 2017

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